(B)双調の呂調弦

 譜例(50)は楽筝の双調・呂調弦の譜表です。

[譜例・50]

 この調弦法は前の壱越調の呂調弦を全くそのままの音列構成を保持して、完全四度上 に移調したものだと言うことが判ります。従ってこれに内在する曲調の各種も、その前 例の類推法に習って配立すれば、次の譜例(51)の通りとなります。

〔譜例・51〕

 

 譜例の(イ)は双調(G)の呂旋法で、(ロ)はDを第一核音とする律旋五音階です。 そして(ハ)はその重属音(D)上に成立したEの陽旋五音階です。続いて同調の楽琵 琶の調弦法とその各弦上の重音律譜です。

[譜例・52]

楽琵琶・双調(呂調弦)

 一の弦の開放が宮(do )から始まっていることは、前の壱越調とは違っています。こ のことは東洋の移調弦楽器には屡々見られる便法で、弦鳴するテンションの関係で、開 放弦音律の転回型(組替)です。また呂調旋法の場合は、この様式の方が適応していると思われます。

 楽筝の調弦音律とは違って、当然呂の五音七声も、また同主音の律旋五音階〔(譜例、 51)の(ニ)参照〕まで含まれています。

 さらに各弦音律譜を照合しながら、次の譜例(53)の、2種の陰旋五音階成立譜表 を検討してみてください。

[譜例・53]

楽琵琶・双調(呂調弦)

 壱越の徴一と双調の宮一と言う調弦様式の違いが、このようにより一層、その転調域 を拡げる結果となっています。楽琵琶の音律構造は、雅楽のような形式的音楽ではなく、 俗楽のようなより内容的音楽に適応していることを、改めて確認できたわけです。